概要
マインクラフトではコンブは乾かしてブロックにすると燃料になります。 日本人にとってはコンブは食べ物であって燃料ではないため、これはかなり奇妙なことではないでしょうか。 では、海外ではコンブは燃料として使われている、もしくはいたのかというと、ちょっと違います。 実はちょっとした産業史が関わってくるのです。
マインクラフトのコンブは日本のコンブではない
マインクラフトの英語版では、Javaバージョンの日本語版でコンブのことは「Kelp」(ケルプ)と表記されています。
ケルプというのはコンブ科の海藻のことで、マインクラフトのコンブは、おそらく形状からして、ジャイアントケルプ(オオウキモ)を表していると思われます。
つまり、コンブという名前で、種としても日本のコンブに近いのですが、ちょっと違います。 具体的にはジャイアントケルプは藻類最大の種で50メートルもの大きさになります。 見た目も異なり、浮き袋を持っているので水面へ向かってまっすぐと成長していきます。 普通のコンブは海底から帯状の葉を伸ばして海流によってたなびくだけです。
ドキュメンタリー番組などで北の海でラッコが巨大な海藻がただよう中、泳いでいるのを見たことがある人もいるでしょう。 あの海藻がジャイアントケルプです。
ちなみになぜか普通は食べないようですが、昔は食用にしていたこともあるようで食べられないわけではないようです。
海外ではコンブを燃やしていた
海外では18世紀から19世紀初頭まで、このケルプを燃やしていました。 それは燃料として、というわけではなく、石けんの原料としてです。
ケルプなどの海藻を燃やすと、海水の塩分由来のナトリウム(塩は塩化ナトリウムですから)のせいで、その灰には炭酸ナトリウム(ソーダ灰)がたくさん含まれています。 炭酸ナトリウムを水に溶かして油と混ぜると石けんができます。 この反応(けん化)については高校の化学で習った人もいるでしょう。
石けん自体は昔から、それこそ紀元前から植物の灰と水と油を混ぜればできることは知られていました。 しかし、初期の石けんはカリウムを使った液体石けんであまり使い勝手が良くありませんでした。 今とは違って使い捨て容器などない時代ですから、タルで運んでいちいち容器を持ってきてもらって量り売りしないといけません。
中世になってアラビアの錬金術師が海辺に生える塩生植物を使って固形のナトリウム石けんの作り方を生み出します。 その後、ヨーロッパでも固形石けんが作られるようになり、産業革命以降、海藻を使って大量に生産されるようになります。
そのため、北欧やスコットランドではさかんにケルプを燃やし灰を集めるのが、海辺の寒村の重要な産業となっていたのです。
やがて、鉱石を使ったり、海水から電気を使って水酸化ナトリウムを取りだしたりするようになり、こちらの方が効率よく石けんが作れるため、ケルプを燃やすという産業はすぐに廃れていきました。
今では石けんを作るためにケルプを燃やすことはまずありません。 現在は、栄養豊富なケルプはサプリメントの原料などで使われています。 さらに洗剤は石油から作られる合成洗剤が主流となり、石けん自体も以前ほどは使われていません。
マインクラフトのコンブ
石けんの歴史、などという産業史は、国王がどうしたとか、戦争がどうなったか、などの一般的な「歴史」にくらべるとなかなか一般には知られていない物です。
特に外国の産業史には触れる機会はなかなかありません。 せいぜい、産業革命時に大きな変革をもたらした、蒸気機関や力織機ぐらいのもので、それもごく一部を取り出しただけの物です。
私はたまたま読んだ本に書いてあったので知りましたが、日本人でこういったことを知っている人は少数でしょう。
(Amazon) 文明的な生活のためには、もちろん、石けんの作り方も載っています。
ただし、マインクラフトの製作を行っているMojangは北欧の海に面した国、スウェーデンの会社です。 その開発にたずさわっている人達は日本人よりははるかにこういった歴史に触れる機会は多かったでしょう。 実際の所は分かりませんが、おそらくは、ゲームデザイナーがこういった歴史を踏まえてコンブを燃料としたのでしょう。
マインクラフトの中では、コンブは海に行けばいくらでも生えていて、食料になり燃料にもなる大変便利なアイテムです。
特に初期スポーン地点が海の近くだと、序盤ではかなり重要な資源となります。
自動収穫も可能なので、燃料を無限に製作する事もできます。 肉屋に売ってエメラルドにする事もできます。 ただし、マイクラのコンブはとても成長が遅いので、経験的には最低でも一度に50本ぐらい育てないと燃料としてはすぐに足りなくなります。 そのため、装置がかなり巨大になります。
また、サトウキビと違って高さ2ブロックで成長が止まることがあるため、高さ3ブロック目をオブザーバーで監視する方法だとやがて収穫されなくなります。 それを解決していない自動収穫装置もネット上でよく見かけます。 最近、コンブ収穫機の効率が落ちた、という場合はそういうのを作ってしまったのかもしれませんね。
それでもコンブブロックは1つで20アイテムも焼けるので、保存にも持ち運ぶにも便利です。 効率が下がらない自動装置なら作る価値は十分にあります。
Ver.1.16からは骨粉でも育つようになったので、さらに利用価値が高くなりました。
石けんは作れませんが、うまく利用すればマインクラフトのコンブはとても役に立ちます。
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公開日:2020-05-03