Flashゲームを作る上で気をつけるべきいくつかのこと

Flashゲームを、特に海外で公開するような場合に気をつけるべき事をいくつか紹介します。

はじめに

良いゲームの作成に一般論というものはありませんが、とはいえやはりこれが守れていないと評価を下げてしまうというものがあります。特に海外では競争が激しくちょっとした瑕疵でも周りとの差が大きく開けられてしまう場合があります。例えば、「マモノスイーパー」というゲームが製作者のサイトで公開されて高い評価を得ました。ところがそれがKongregateで公開されるとほとんど話題になりませんでした。その大きな要因は新しいタイプのパズルゲームにもかかわらず、チュートリアルがなく、操作説明の英語もひどくユーザーがまともに遊ぶことができなかった事です。その後コメント欄に親切なプレイヤーが操作説明を書いてくれたおかげで徐々に評価が上がって行きましたが、時すでに遅くたくさんのゲームの中に埋もれてしまいました。他にもこのゲームは海外で公開するには多くの問題があるのですが、それらはこのページを読むことでわかるので省略します。重要なのは、たとえアイデアなどが優れていてもゲームとしての体裁が整っていなければ評価されない場合が実際にあるということです。ここではそのような最低限考慮する必要のあるポイントを紹介します。このページで紹介しているのは、Flashゲームを特に海外で公開する場合に気をつけるべき最低限のものです。これを守ったからといって良いゲームが作れるというわけでもないです。ただし、これらのポイントを踏まえた上でゲームを作る事は覚えておいて損はないでしょう。そして斬新なアイデアや高い技術、クオリティの高いゲームアートやレベルデザインや十分なテストなどの条件が満たされれば人気のあるゲームとなるでしょう。

全般

Flashゲームはもはやプログラマーズ・アートではない

Flashゲームをプログラミングやゲームルールのデモのように考えて、ゲームとしての体裁や演出などを無視しているような作品を見かけますが、そのような作品が海外で受け入れられるようなことはもはやまれです。たとえ素晴らしい商品でも包装や説明など一切ないものが購入されることがないように、ゲームもある程度のユーザビリティが整っていなければ遊ばれることはありません。FPSを60にする、ライブラリーを整えたりフレームワークを作る、細かな計算の速さといった、一般ユーザーにはまず通じないプログラマー的な問題に拘泥する暇があったらユーザビリティを少しでも上げるべきです。

Flashゲームはコンシューマーゲームとは違う

Flashゲームとコンシューマーゲームとは違うものです。たとえば、コンシューマーゲームはお金を出してゲームを買うのでユーザはある程度ゲーム好きで説明書を読んでくれたりゲームに時間をかけてくれることが期待できます。Flashゲームはカジュアルゲームと呼ばれるように、ライトユーザー中心で、さほどゲームのために時間を割いてくれたりはしません。操作もコンシューマーゲームはゲームパッドが中心ですが、Flashゲームはキーボードとマウスです。そのためFlashゲームは微妙な操作やシビアなタイミングを必要とするゲームにはあまり向いていません。そのかわりキーボードショートカットやマウスのおかげで、項目が多くても簡単に設定が変えられたり、画面の中である部分を選ぶような操作は得意です。例えば、タワーディフェンスゲームをマウスまたはゲームパッドで操作することを想像して比較してみればわかりやすいでしょう。

またプレイヤーの年齢層も違います。日本のコンシューマーゲームは10代後半から20代ぐらいをターゲットにしている印象ですが、Flashゲームのプレイヤーの年齢はおそらく国内で20代後半、海外では30代後半かそれ以上が平均です。また女性もかなり含まれています。そのため、いかにも子どもっぽいようなゲーム、反射神経の必要とされるゲームなどはうけにくいです。

そのような事情もあってか海外ではFlashゲームはアクションやシューティングよりもパズルやシミュレーションのほうが人気が出やすいように思います。アクションゲームで人気作もありますが、たいてい難易度を低めにしたりパズル要素を多くしたりして、操作性が悪くても気にならないような工夫がされています。ところが日本ではマリオやロックマンといったコンシューマーゲームの影響が強いのか、未だにさほどそのような工夫もなくアクションやシューティングをつくる人が多いようです。また、コンシューマーゲームでの人気作をコピーしたようなゲームを出してしまうと、どうして比較されてしまいますしオリジナリティの面でも評価が低くなります。このあたりの意識がまず変わらないと人気のあるFlashゲームを作るのは難しいかもしれません。

最初の数分でプレイヤーを惹きつける工夫をする

海外ではいまや何万というFlashゲームが公開され、日々その数を増やしています。必然的にプレイヤーは面白いゲームを探すために、いろいろなゲームを短い時間プレイして自分にあっているかどうかを確かめます。つまり一つ一つのゲームにかける時間が非常に短くなっています。このことは、お金を出しているのでたいてい説明書などを読んである程度の時間プレイしてくれるコンシューマーゲームとは大きく違うので注意が必要です。例えば、Flashゲームのスポンサーシップのマッチングを行っているFlashGameLicense.comのスポンサーが1ゲームのプレビューにかける時間はおよそ90秒と言われています。スポンサーですらこの程度ですから、一般のプレイヤーはもっと短いかもしれません。それゆえなるべく最初の数分でプレイヤーを惹きつける工夫が必要です。速ければ速いほど良いです。例えば、アップグレードやレベルアップ、アチーブメントがあるなら、チュートリアルを兼ねて2,3分以内で最初のそれができるようにするなどです。最初に長々とした説明があるのもあまり良くありません。クオリティの高いアニメーションなどを用意してプレイヤーに興味を持たせられるとかなら良いですが、そうでないなら導入部は短くして操作説明や世界観はゲーム中でだんだんとわかるようにするべきです。導入部があったとしてもスキップ可能にしましょう。もちろん、説明自体を省略しても楽しめるようにするのが一番良いです。

ボリュームを十分に用意する

ユーザーが満足できるようなゲームのボリュームはおそらく数時間は遊べるものでしょう。それ以下では物足りない印象を与えてしまうかも知れません。1ゲームがすぐに終わるけれども繰り返し遊べる、というようなゲームは理想的ですが実際にはそうそう作れるものではありません。また、そういうゲームができたとしてもボリュームが多いことがマイナス要因となるわけではありません。必ずある程度の時間遊べるゲームを作りましょう。国内だとまだまだFlashはミニゲームという印象が強いようですが、海外ではそうではありません。実際5分や10分で終わるようなゲームはあまり見かけません。パズルで1面しかないなどは論外です。

基本

タイトル画面をつける

タイトル画面をつけましょう。他の画面へ遷移する起点となりますし、なによりいまや海外では無くていきなりゲームが始まると手抜きか習作ぐらいとしか受け取られません。

BGM、効果音など音をつける

BGMや効果音はなるべくつけましょう。ゲームの雰囲気が大きく変わります。

なるべくクォリティの高い画像を用意する

ゲーム内で使われる画像はできるだけ見栄えのよいものを使いましょう。それだけでゲームの評価が変わってきます。

難易度は低めにする

ゲームの難易度は低めにするか、複数の難易度を用意しましょう。Flashゲームのようないわゆるカジュアルゲームのプレイヤーはほとんどは暇な時間に少し遊ぶ程度のライトユーザーで、超高難度などを要求したりはしません。難易度は低めの方が良いでしょう。とはいえ、インターネットユーザーは非常に多くのいろいろなプレイヤーがいるのでできれば複数の難易度を用意するべきです。

画面サイズ

海外のゲームサイトで公表するなら、スポンサーの広告が入りかつほとんどのサイトで表示可能なサイズ、すなわち640×480以下400×300以上にすべきです。それより大きくする場合も800×600以下にすべきです。それ以上だとほとんどのゲームサイトは掲載してくれません。

SWFファイル

海外で公表するならファイルは1ファイルにまとめましょう。複数ファイルを嫌うサイトは多くあります。その分公開される機会が減ります。そのことやローダーをつける事を踏まえて制作しましょう。

ブラッシュアップ

画質・音量調整・リスタートができるようにする

プレイヤーがゲームをする環境はいろいろなものがあります。高負荷のゲームでは画質調整があると低スペックのPCでもプレイできるかもしれません。プレイヤーによってはゲーム中の音楽が気に入らないかもしれません。かならず画質や音量調整ができるようにしましょう。これも海外のゲームでは出来るのが普通ですから、できないゲームは手抜きだと思われます。また、ゲームを最初からやり直したいと言うことは良くあることです。リスタートできる手段を必ず用意しましょう。

ショートカットキー

よく使う機能にはショートカットキーを割り振りましょう。マウスで細かいボタンを押すのはかなりストレスのたまることです。

注目されるようなサムネイル画像を用意する

サムネイル画像の段階でクリックされなければ話になりません。あざとくならない程度になるべく注目されるようなものを用意しましょう。

チュートリアルをつける

「ゲーム内」にチュートリアルや操作説明をつけましょう。ゲームの外のHTMLに書きこんでも多くのユーザーはそれを見ません。また、海外のゲームサイトなどで公開するときには、ゲーム外にどのような形でゲーム紹介や操作説明が書かれるかわかりません。必ずゲームの操作説明はゲームの中に入れましょう。ゲームが進むにつれて説明がでるようなタイプのチュートリアルが良いでしょう。説明無しに直感的にプレイできてもネット上にはいろいろなプレイヤーがいますから、そのようなゲームの場合にも操作説明は入れましょう。

通じる英語を使う

完全に正しい翻訳でなくても通じる英語を使うようにしましょう。機械翻訳を使うとほとんど通じないようなひどい英語になる場合があります。それより同じ系統の他のゲームを参考にしたほうが良いでしょう。知り合いで英語ができる人がいるなら頼んでみましょう。知り合いにいなくても、ゲームで使う程度の英語ならそれほどレベルの高いものは必要ありませんから、自分で勉強してがんばりましょう。お金に余裕があるなら翻訳業者に頼んでも良いかもしれません。意外に英語の間違いを気にするプレイヤーは多く、それを指摘するコメントも多くみかけるのでなるべく正しい英語を使うべきですが、そうでないプレイヤーも多いのであまり気にし過ぎることもありません。しかし、通じなければ話になりません。

アチーブメント要素を付ける

アチーブメントは「実績」などと訳されています。プレイヤーが何か条件を満たすと達成され、ゲームによってはメダルなどをもらえものです。条件は「チュートリアルを見る」「最初の敵を倒す」といった簡単なものから、「全部の面をクリアする」などといった物まで様々なものが考えられます。プレイヤーによってはこれをコンプリートするのを目的としている人もいます。また、このようなはっきりした形のアチーブメントでなくても、ゲームの進行を記録してユーザーの行動によって積み重ねる何かを用意しましょう。そうすればプレイヤーが繰り返しゲームを遊ぶ動機となり得ます。ランキングを付けるのもいいでしょう。ですがその場合はチート対策をしっかりとしておく必要があります。Flashゲームのチート対策についてはこちらで書いています

デバイスフォントを使わない

デバイスフォントを使うとどうしても安っぽく素人臭い印象になります。ゲームでは動的にテキストを変える状況は少ないはずですから、できるだけ埋め込みフォントや静的なフォントを使いましょう。

ビットマップ画像を使うなら圧縮率や小数点座標などに気をつける

ビットマップ画像を使うときはパブリッシュの設定などの圧縮率に気をつけましょう。画像が荒れると安っぽくなります。また、小数点座標に配置すると表示がぼやけます。さらに回転・拡大縮小を行う場合にはスムージングするかベクター画像を使うようにしましょう。このような部分がいい加減だとやはり素人臭いものになります。

音を入れるときにはステレオ・音質などに気をつける

パブリッシュ設定などで音質・ステレオ設定など調整しておきましょう。特にステレオかモノラルかでヘッドフォンでプレイする人にとってはかなり印象が変わります。

次の作品のために

スプラッシュ画面、クレジット画面などをつけてブランディングをする

ゲームの最初に製作者のスプラッシュ画面をつけましょう。複数開発の場合やフリー素材を使っている場合はクレジット画面をつけましょう。このようなブランディングを行うことで、次のゲームを遊んでくれるファンを作ることができます。また、swfが不法に盗まれてホストされた場合にもそこからトラフィックを導くことができます。スポンサーが付かなくても、「他のゲーム」「more games」といったボタンをつけてプレイヤーを自分のサイトに導く工夫をしても良いかもしれません。

SWFを暗号化する

特に海外ではSWFを解析してブランディングの画像を差し替え、リンク先URLも変えて公開するような人が沢山います。なるべくSWFは暗号化しましょう。暗号化してもSWFの画像や文字列だけを差し替えるのは可能なので、スクリプトだけでなく、md5などを使って画像やリンクの差し替え対策もした方が良いでしょう。

終わりに

ここで紹介したポイントは守れば良いゲームになるという物ではありません。全く同じ内容でこれらが守られていない物と守られているゲームがあれば評価に差が出るだろうという物です。ゲームによってはあえて守らない、またはこれらのポイントをゲームの中心としてしまう、などと言うことも可能です。実際アチーブメント要素に特化したようなゲームは海外ではかなりの数が出ていますし、あえて難度の高いゲームを出して人気が出ている物もあります。とはいえ知っていてあえて破るのと知らずに「やってしまう」のでは大きな違いです。ゲームの設計をするときや公開する直前に、これらの点が守られているか、守られていないならそれに理由があり問題がないかを考えてみれば少なくとも明らかなミスのいくつかは避けられるでしょう。

・参考サイト
FlashGameLicense.com
http://www.flashgamelicense.com
Mochi Media Wiki
http://wiki.mochimedia.com
10 Ways to Make a Bad Casual Game
http://www.tomhume.org/2006/02/10_ways_to_make.html
5 Simple Game Polish Tips by Mike Pollack
http://mochiland.com/articles/5-simple-game-polish-tips-by-mike-pollack

Share

One Comment

  1. […] This post was mentioned on Twitter by 杉野淳. 杉野淳 said: RT @dice_s: 特にマネタイズを目的として海外向けゲームを作る人は一読の価値あり。 ||| NJF – Flashゲームを作る上で気をつけるべきいくつか […]

コメントする